シネマ感想文⑨ 〜 あの有名な曲も

ミュージカルには〈ジュークボックス・ミュージカル〉というジャンルがあります。ミュージカル用に書き下ろされた新曲ではなく、既存の楽曲を使ったミュージカルのことで、一般的には、特定のアーティストやグループに関連した楽曲が使われるようです。この〈ジュークボックス・ミュージカル〉の代表作といえば、ABBAの音楽をベースにした『マンマ・ミーア』(1999年〜)、ビリー・ジョエルの楽曲を使用した『ムーヴィン・アウト』(2002年〜)などがあります。そして2005年のブロードウェイ初演から現在もロングランのヒット作で、2006年トニー賞受賞、21世紀最高の伝記ミュージカルのひとつと評価される名作が、1960年代に活躍したコーラス基調のロックンロールバンド〈フランキー・ヴァリ&ザ・フォー・シーズンズ〉の経歴を基に描いた『ジャージー・ボーイズ』ですね。このミュージカルを監督クリント・イーストウッドが映画化した作品が、

『ジャージー・ボーイズ』
(2014年、アメリカ映画)

前置きが長くなりましたので、作品紹介やあらすじは割愛させていただきますが、バンド結成のエピソードから始まる物語は、波瀾万丈、紆余曲折、ハプニングの連続でとてもおもしろい。しかしながらこの映画の見どころは何をおいても音楽といって間違いありません。そしてこの映画を最高に楽しむためには、観る前にいくつかの条件があるようです。私のように。それは、

・〈ザ・フォー・シーズンズ〉を全く知らない
・70年代〜80年代の洋楽をよく聴いた
・オールディーズ全集などもよく聴いた

この条件を満たした上で、この映画を観ることができれば感動の連続です。劇中で彼らが演奏したり、BGMで流れる彼らの楽曲が、聴いたことのある曲ばかりです。
いきなりオープニングの「December,1963」で(えっ彼らの曲なの!)
デビュー曲「Sherry」で(えっこの曲も!)
さらにBGMの「Bye,Bye,Baby」で(えっオリジナルは彼らなの!)
エンドロールに流れる「Rag Doll」で(えっこれもそうなんだ!)

そしてクライマックス。
最愛の娘を亡くして深い悲しみを負ったフランキーに、バンドメンバーで作曲家のボブ・ゴーディオが新曲の楽譜を渡します。彼を立ち直らせるため、彼のために書いた曲。その新曲をフランキーがライブ会場で熱唱し、観客の拍手喝采を浴びます。
やがてその曲は大ヒットし、スタンダードナンバーとなり、80年代にはカバー曲がさらにヒットした、日本人でもよく知ってるあの有名な曲。
恥ずかしながらこのシーンを観るまで、彼らの楽曲とは知りませんでした。

まだ映画を観ていない上に、最高に楽しむ条件をクリアしている方のために、あの有名な曲名は伏せておくことにします。
〈ジュークボックス〉というより〈ビックリ箱〉と表現したい、お気に入りのミュージカル映画でした。

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