明治のキャンディー『チェルシー』が3月いっぱいで販売終了となりました。1971年に誕生し、誰もに愛されたあの『チェルシー』もついに53年の長い歴史に幕を下ろしたことになります。3月4日に報じられたニュースによれば『チェルシー』の販売終了の理由として、明治が「市場環境や顧客のニーズの変化に伴う販売規模の低迷により、収益性が悪化し、販売を終了せざるを得ない状況にあるため」と説明したようですね。
私ごとですがこの『チェルシー』への思い入れが深いため、販売終了の報道直後に某コンビニ、スーパーを3軒ほど巡ってみたのですが、残念ながら手に入れることはできませんでした。そのとき店舗のお菓子売り場で『チェルシー』を探しながら感じたことはアメの種類が少ない、キャラメルもない、ガムもない、グミが多いということ。これが明治の説明にある「市場環境や顧客のニーズの変化」なのかと理解しました。
それならば、せめて思い出を心に深く刻んでおこうと明治『チェルシー』のホームページを拝見すると『チェルシー』にまつわる3つのエピソードが紹介されていました。
まずは〈チェルシー誕生物語〉。発売2年前から「キャンディーの新しい分野を切り拓く」という意気込みで大型のプロジェクトを組み、「今までにない特長とおいしさ」を求めて徹底的に市場調査を行い、世界中に目をむけるなかで、英国スコットランドに古くから伝わるスカッチキャンディーにたどり着いたとあります。さらに「今までにない特長とおいしさ」を求めた明治は、それまで日本にはなかった「流し込み」といわれる新製法を採用し、これにより従来製法よりはるかになめらかなキャンディーを作ることができる上に、それまで5〜6%が限界だったバターの含有量を増やすことができたとあります。「だからバター風味たっぷりの『チェルシー』が生まれたのです。これが『チェルシー』のおいしさの秘密です」と紹介されていました。
つぎに〈チェルシーの歴史〉。1971年の発売以来、じつはさまざまな味の『チェルシー』が登場していたことに驚かされます。パッケージの写真とともに年代順に紹介される『チェルシー』のバリエーションを見ていると2000年代に発売されたベリー&ミルク味、抹茶ミルク味、焦がし黒糖ミルク味などスイーツのトレンドも取り入れながら試行錯誤していたことがうかがえます。そしてなによりパッケージのデザイン変更を繰り返しながらも発売から今日まで一貫して販売されていたものが、ピンクの小箱の〈バタースカッチ〉、グリーンの小箱の〈ヨーグルトスカッチ〉というおなじみの2種類であったことはまことに感慨深いことです。
そして最後に〈チェルシーの唄〉。スコットランドの自然の中で外国人の少女たちが戯れるおなじみのCMのバックに流れるやさしいメロディが〈チェルシーの唄〉ですね。CM放映開始時の楽曲ではシモンズという女性デュオが歌唱しており、その後この〈チェルシーの唄〉をカバー録音した歴代アーティストとして、ガロ、ペドロ&カプリシャス、南沙織、サーカス、八神純子、あみん、大貫妙子、アグネス・チャン、ハイ・ファイ・セット、シーナ(シーナ&ロケッツ)、PUFFY、CHEMISTRY、Every Little Thing、秦基博など錚々たるアーティストたちによって歌い継がれてきました。〈チェルシーの唄〉は世代を超えて愛された『チェルシー』のやさしい味を象徴する名曲といえそうです。
チェルシーの唄
(作詞:安井かずみ、作曲:小林亜星)
1. なつかしい人に出逢ったような
やさしいたよりがいまとどいた
忘れかけていた幸せ
あなたにも わけてあげたい
ホラ、チェルシー
もひとつチェルシー
2. 小さな願いが かなったときの
うれしい気持ちは もうかくせない
歌いたくなるような1日
みんなにも わけてあげたい
ホラ、チェルシー
もひとつチェルシー
3. 口笛ふきたい 胸をおさえて
この手のなかには 愛の夢が
わたしにはわかる 明日が
楽しさを わけてあげたい
ホラ、チェルシー
もひとつチェルシー