『黄金色の光がゆるやかに海岸を染めていく。まさにフランス語の表現では「犬と狼の間」と表現される時刻だった。昼でもなく、夜でもないという意味だ』
ネット記事で見かけた、文筆家の村上香住子さんの寄稿文の一節です。この中の「犬と狼の間」という言葉に魅き寄せられて語源を調べてみると、
ー フランス語〈Entre chien et loup(アントレ シアン エ ルー)〉、意味は黄昏どき。この表現は13世紀まで遡り、「犬と狼の間に夕食をとった」と記された書物も残されている。犬は人間に飼育されて生きる動物で、一方の狼は完全な野生動物、その違いを見分けるのが曖昧になる時間帯をいい、そのときに一抹の不安や恐怖を覚えるというニュアンスも含んでいる。
動物の名前で時(とき)を表現するというのは、どこか洒落ていてロマンチックで、とても素敵な言葉ですね。犬?
時を表す「犬」といえば、かつて習った英語を思い出しました。
『Dog days(ドッグ・デイズ)』
ー 夏のうち最も暑い時期、「真夏」「盛夏」を表す言葉。由来は、おおいぬ座のシリウス(Dog Star)が、7月から8月にかけて日の出とともに現れ、日の入りとともに沈むことが、この時期が暑くなることと関連付けられたため。ドイツ、フランス、イタリアなどヨーロッパの国々では現在でも7月24日から8月23日の期間をドッグ・デイズと呼んでいる。
それならば、日本語における「盛夏」を表す「動物」が入る言葉といえば、ありました。
『土用の丑の日(どようのうしのひ)』
ー 「土用」とは季節の変わり目を意味する雑節で四季の四立(立春、立夏、立秋、立冬)の直前の約18日間を指す。「丑の日」は十二支(干支)に基づく日付のこと。このため夏以外の季節にも土用の丑の日は存在するが、一般には夏のもののみを指す。この日に鰻を食べる習慣については諸説あり、一説には平賀源内が夏に売れない鰻を売るために、鰻屋の店先に「本日丑の日」と貼り紙をしたところ、鰻屋が大繁盛したことがきっかけともいわれています。