シネマ感想文②〜罪悪深重の凡夫

『ショーシャンクの空に』(1994年、アメリカ映画)

冤罪事件で終身刑となり、ショーシャンク刑務所に投獄された有能な銀行員アンディ(ティム・ロビンス)が、腐敗した刑務所の中でも希望を捨てず生き抜いていくヒューマンドラマ。

今回取り上げたいのは、なにをおいてもモーガン・フリーマン演じるレッドの仮釈放の審査面接の場面ですね。劇中、10年ごとの時を経ながら3度の面接シーンが描かれます。彼の表情や態度や振舞いが面接ごとに変化していき、それらを踏まえた3度目の面接場面です。

服役40年目の審査面接。彼は静かに着席すると正面の面接官を見つめます。そして面接官からの10年ぶり3度目の同じ質問「更生は?」。彼は答えます。

更生?更生ね。どういう意味だか・・
更生というのは国が作った言葉だ
君たちに背広やタイや仕事を与えるために
罪を犯して後悔してるか知りたいのか?
しない日などない
罪を犯した日からずっとだ
あの当時の俺は一人の男を命を奪ったバカな若造だった
彼と話したい
まともな話をしたい
今の気持ちとか
でもムリだ
彼はとうに死に この老いぼれだけが残った
罪を背負って
更生?
全く意味のない言葉だ
不可の判を押せ
これは時間の無駄だ
正直 仮釈放などどうでもいい

語り終えると彼は顔を横に向け、腕を組んで宙空を見つめます。

親鸞聖人の教えに「罪悪深重の凡夫」というお言葉があります。わたしほど罪深い人間はいないと知らされることですが、レッドは40年の服役中数々の体験(特にアンディと知り合ってから)を通して、この深淵に立ったと言えます。面接での彼は、罪悪深重しかない自分を包み隠さず、取り繕わず、ありのままにさらけ出します。

後悔を背負い続けることを本当に気付かされた彼にとっては、塀の中か外かなど関係はなく、仮釈放など本音本心どうでもよかったのでしょう。そんな彼が、仮釈放されることになります。これこそが「罪悪深重の凡夫」の理を表しているとも言えそうです。

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