マンハッタンの街

シネマ感想文⑤ 〜〈忘れ物〉はなに?

『ステイン・アライブ』
(1983年、アメリカ映画)

1977年に公開された大ヒット映画『サタデー・ナイト・フィーバー』の続編。監督・脚本・制作はシルベスター・スタローン。前作から6年後、ディスコ通いから足を洗い、ブロードウェイのダンサーを目指す青年トニー・マネロ(ジョン・トラボルタ)の挫折から成功までの紆余曲折を描く青春ダンス映画。

さっそくですが、この映画は批評家たちから最低の評価を受けた作品です。たしかにこの作品を観ていると、三角関係の恋愛物語の展開が続いて盛り上がりに欠けます。しかしながら前作のファンにとってはそんなことよりもなによりもこの映画が進むにつれ、何かが足りない…あるべきものがない…なにか〈忘れ物〉をしているような…そんな気分になります。そんな思いのまま迎えたラストシーン。

舞台を大成功で終えたトニーが恋人ジャッキーに言います。

トニー「俺が何をしたいか解るかい?」
ジャッキー「何をしたいの?」
トニー「歩くのさ」

トニーがロビーの玄関ドアを押し開けると同時にビージーズの「ステイン・アライブ」が流れ、リズムを刻みながらトニーがマンハッタンの街を歩きます。

前作のオープニング。トニー・マネロがペンキ缶を片手にぶら下げブルックリンの街中を「歩く」シーン。ビージーズの曲にあわせて大股で腕を振らない独特な歩き方は当時「トラボルタウォーク」といわれ大きな話題となりました。〈忘れ物〉はこれでした。そして監督スタローンが〈忘れ物〉をするはずがありません。最後の最後に「トラボルタウォーク」を残していました。

映像と音楽だけでもカッコいいシーンですが、ファンはそれ以上にトニー・マネロの6年の物語が「歩く」で始まり「歩く」で終わる、いろいろあったけどトニーはいつもゴキゲンに「歩く」という爽快感が込み上げ、さらに感動を覚えるのかもしれませんね。誠に失礼ながら、映画の大半を覚えていませんが、ラストシーンは歴代ベスト3に入る作品でした。

お問い合わせ
PAGE TOP