世の中には幸も不幸もない。ただ、考え方でどうにでもなるのだ。

シェークスピアの格言から

「世の中には幸も不幸もない。ただ、考え方でどうにでもなるのだ。」

(シェークスピア作、『ハムレット』)

16世紀イングランドの劇作家シェークスピアの残した有名な格言のひとつですね。わが身に起きた悲しい出来事によって精神的に落ち込み、その後の行動が消極的になったり、足踏みしたりすることがあります。その時、この言葉は「物事をどう捉えるかは自分次第、あるがままに受け入れることで、その後の行動において自由な選択ができる」ことを教えてくれているようです。苦しいとき、行き詰まったとき、この言葉はその人を慰め、再び歩き出す勇気を与える素敵な力を持っているようですね。

そしてシェークスピア以前の日本には、〈幸と不幸〉をさらに広義の〈善と悪〉とした同様の格言が残されています。浄土真宗開祖 親鸞聖人の仰せです。

「善悪のふたつ総じてもて存知せざるなり」

(『歎異抄』後序)

この身に起こることの中で、なにが良くて、なにが悪いのか、誰にもわからないのです。続けて、「煩悩具足の凡夫」である私たち〝愚か者〟が、その目でなにもかも判断することは悲しいことです。だからこそ、今起こっている事実を、あるがままにいただき、あとはお任せしませんか?と問いかけられています。仏教においては、善悪など物事を自分の尺度で分け隔てることを〈分別〉といいます。一方、〈無分別〉とは「そのままを見て受け入れていこう」という意味です。苦しいから、悲しいから、嫌いだから、合わないから、という心の境界線〈分別〉を取り払い、仏の視野〈無分別〉を視座とすることで、為すべき事柄、歩むべき道筋はすでに開かれている事に気付いて行けますよ。そう仰ってくれているようです。

シェークスピアと親鸞聖人。洋の東西を問わず、賢人の言葉には耳を傾けたいものです。

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