シネマ感想文⑥『沈黙の戦艦』 (1992年、アメリカ映画)

核弾頭ミサイルを狙ったテロリストに乗っ取られたアメリカ海軍の戦艦を、元海軍特殊部隊の指揮官だったコック(スティーヴン・セガール)が奪還を目指すアクション映画。

この映画の悪役。テロリストのリーダーであるあの俳優を初めて見たのはこの作品でした。それまでのアクション映画に登場した多くの悪役の中でも、この作品で活躍した彼は最強だったと言えそうです。

戦艦ミズーリ内のパーティーの余興に呼ばれたロックバンドの演奏シーン。バンドのボーカルの男がサングラスをかけて、キレのいいステップを踏みながら、ノリのいいリズム&ブルースを歌い、会場は大盛り上がり。やがて間奏に入ると、彼が陽気に笑顔を浮かべて、客席に向かって声を掛けます。

「この中で一番偉いのは誰だい?」

やがて、ひとりの将校が立ち上がって、

「私だよ、艦長の次の次だ」

すると、ボーカルの男の様子が一転、

「光栄です、グリーン中佐」

言うや否や、拳銃を取り出し、
将校の頭を撃ち抜きます

この場面、彼のミュージシャンとしてのパフォーマンスが見事すぎてテロリストのリーダーとは気付かず、パーティー会場の水兵たちと同様、映画を観ている者も度肝を抜かれます。

この登場シーンから始まり、その後の彼の怪演ぶりは圧巻です。あくの強い強面で凄みがあり、それでいて思慮深く、不気味な笑みを浮かべるなど表情が豊かで、なにより身のこなしがしなやかで身体全体での表現力に驚かされます。

映画を見終わった後も、彼の印象は強烈に残り、その印象が薄れる間もなく、次に彼を見たのが、『逃亡者』(1993年、アメリカ映画)の連邦保安官役。そして彼はこの作品でアカデミー賞・最優秀助演男優賞を獲得しました。

彼の名前は、宇宙人。
トミー・リー・ジョーンズさんですね。
もう言うまでもありませんでした。失礼しました。

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