『非戦』〜坂本龍一さんを偲ぶ

2023年3月28日、作曲家の坂本龍一さんが他界されました。享年71歳。
その訃報は日本のみならず、世界各国が速報で報道し、世界中の著名人のWebサイトやSNSアカウントで追悼文が公開され、改めて彼が「世界のサカモト」だったことを気づかされました。

坂本龍一さんの音楽を聴き続けた一人として、身勝手に思うのは、彼の最大の偉業は「世界のサカモト」になった後にあったのかもしれないということです。

2001年9月。ニューヨークの自宅からわずか2km先で起きた〈アメリカ同時多発テロ〉によって、音楽も聴けない、曲も作れないほどの衝撃を受けた彼が、改めて「音楽の役割」を自問自答して辿り着いた思いが、

「『反戦』ではダメなんです、『非戦』です。〈戦うにあらず〉ですから、とにかく僕は、人が人を殺すのは良くないと。殺さないでくれと思ってるわけです」

坂本龍一さんが残した、この『非戦』という言葉。辞書で調べるではなく、誰かに訊くではなく、自分で解釈しろと突きつけられているようです。
『反戦』は理屈、『非戦』は理屈ではない。理屈を伝えるのは言葉だが、理屈ではないものを伝えるには音楽に乗せる他はない。
そんな思いが、その後の彼の音楽活動を突き動かしていたのでしょうか。
我ながら稚拙な解釈です。

戦禍のウクライナで「戦場のメリークリスマス」がピアノ演奏されているネット動画がありました。
坂本龍一さんの『非戦』の思いを乗せたメロディが世界中に響き渡ることを願うばかりです。

合 掌

お問い合わせ
PAGE TOP