CBCラジオの朝のワイド番組『多田しげおの気分爽快!! 朝からP.O.N』が先日、2024年3月29日をもって放送を終了しました。1999年の放送開始から25年の長きにわたり多くのリスナーに愛されたCBCラジオの看板番組が惜しまれつつ幕を下ろしました。
およそ一年前にパーソナリティの多田しげおさんが番組の中で、「来年の3月で終了します」と異例ともいえる一年後に放送終了の告知がありました。そのとき(まだ一年ある)とリスナーも受け入れていたようですが、「ついにこの日を迎えてしまった」。多くのリスナーがそんな気持ちではないでしょうか。
そのリスナーの一人として、25年も続いたこの番組の魅力は何かと考えてみると、やはりパーソナリティ・多田しげおさんに尽きるといって間違いありません。ご本人も常々言っていた、何をおいてもとにかく「わかりやすく、わかりやすく、わかりやすく」。ニュースも、話題も、お便りもすべてわかりやすく、簡単な言葉で、絶妙なテンポで伝えてくれていました。
しかしながら、それだけではないもう一つ肝心なことを多田さんは心がけていたように思います。それは〈目には見えないラジオリスナーに面と向かって語りかけること〉。多田さんの言葉は決して一人喋りではなく必ずラジオの向こうのリスナーに向けられていた。それは〈伝えること〉こそが最も大切なことだと心得ていたからに違いありません。つまりリスナーにとっては、心地よく伝わってくる多田さんの言葉。これが番組の最大の魅力であり、多田さんの偉業だったといえそうです。
昨今の人気アナウンサーは個性的でタレント性こそが求められるものかもしれません。しかしそんなものには目もくれず、ラジオ一筋で局アナを定年まで勤めあげ、その後も特別職さらにフリーとなりながらもひとつの番組を25年やり続けてみせた多田しげおさん。74歳。お見事でした。