2024年のプロ野球は横浜DeNAベイスターズの日本一で幕を閉じました。振り返ってみるとパ・リーグの後半戦を盛り上げた北海道日本ハムファイターズのリーグ2位の大躍進がとくに印象に残ったシーズンでもあります。
この北海道日本ハムファイターズを率いたのは就任3年目の新庄剛志監督。3年前の就任時には野球ファンの間でも賛否両論が巻き起こったことは記憶に新しいところです。新庄さんといえば球場内でのパフォーマンスなどそのタレント性ばかりが目立つ印象のため監督就任には否定的な意見も多かったようですね。しかしながら彼の現役時代を知る多くの選手やOBが口を揃えて評価するのが彼の〈守備力〉であり、さらに守備をベースにした彼独自の野球観でもあります。
新庄監督が就任する直前に、たまたま彼が出演しているYouTube動画を視聴しました。それは新庄さんが実際に指導し、初めて公開する〈世界一の外野守備〉という野球講座。さりとて内野ならともかく外野守備では知れているだろうとタカを括って視聴し始めたのですが、冒頭から驚かされました。彼は現役時代バッティングには興味がなく、とにかく〈魅せる守備〉だけを追求していたとのこと。
その上で紹介された最初の極意がグラブのはめ方。彼は守備用のインナー手袋にたっぷりとマツヤニを塗り、グラブの奥の奥まで指を入れて、どんなに腕を振ってもグラブが抜けない状態にするそうです。通常、外野手はグラブが抜けないようにグラブを小脇に抱えるようにしてボールを追いかけるものですが、新庄さんに言わせれば「その時点でグラブを持つ手に力が入っており、ボールに対して集中できていない」とのこと。彼が全力でボールを追いかけることを追求し、辿り着いた答えです。
そして最も感銘を受けた新庄さんの外野守備の極意が、打球に対するスタートの切り方。彼は投手が投げる一球ごとに左右の方向に飛んでくるライナー性の打球をギリギリのダイビングキャッチで捕球するイメージをしてスタートを切るそうです。そうすると実際に飛んでくる打球はすべて「イージー」になるとのこと。この「最大限の準備をしておく」という考え方は野球やスポーツに限らず、私たちの日常生活においても大いに参考になるものといえそうです。
野球というスポーツには絶対的なルールと、多くの先人たちによって培われた野球理論があります。しかし新庄監督はその限られたルールとセオリーの中で、彼独自の創意工夫をして、見たことのない野球を魅せる。これこそが新庄監督の真価であり魅力といえそうです。
監督続投が決まった来季の日本ハムからも目が離せませんね。