イソップ童話

私たちが幼少の頃から慣れ親しみ、やがて子へ、さらには孫たちへと読み聞かせ、語り継がれる童話作品。中でも「イソップ」「グリム」「アンデルセン」は〈世界の三大童話集〉とよばれ、その物語の多くが世界中の人々の幼少期の記憶に深く刻まれるものであります。

しかしながら、意外と多くの方が、このお話はイソップだっけ?グリムだっけ?と記憶が曖昧になっていることはないでしょうか。
そこでクイズをひとつ。

下の有名な童話作品はそれぞれ三大童話集のどれにあたりますか?

① アリとキリギリス
② 赤ずきん
③ みにくいアヒルの子
④ 北風と太陽
⑤ ブレーメンの音楽隊
⑥ マッチ売りの少女

ここでヒントを兼ねて、三大童話集の大きな特徴、大きな違いとして、それぞれの童話集の「成り立ちと歴史」があげられます。まず「イソップ童話」と「グリム童話」は当時の言い伝えや昔話をまとめたもので特定の作者が書いたものではありません。一方で「アンデルセン童話」は作家アンデルセン自身が書いたお話です。そして驚くべきことはその歴史。「グリム童話」が誕生したのは1812年のドイツ、グリム兄弟によって『子供と家庭のメルヘン(昔話)集』として出版されました。「アンデルセン童話」はデンマークの童話作家アンデルセンが1835年から生涯にかけて著作したものです。そして「イソップ童話」が誕生したのは紀元前6世紀、古代ギリシャのアイソーポス(イソップ)という奴隷がいくつかの寓話を集めたものとされています。つまり「イソップ童話」は2600年の時を経て現在に語り継がれていることになります。

それではクイズの解答です。
①④=イソップ
②⑤=グリム
③⑥=アンデルセン

「グリム童話」は勧善懲悪でわかりやすい起承転結。「アンデルセン童話」は感情に訴えるエンターテイメント作品といったところでしょうか。

このように比較してみると「イソップ童話」のお話は19世紀に誕生した他の二つの童話集とは明らかに異なりますね。『アリとキリギリス』では怠け者はあとで苦労をする。『北風と太陽』では人を動かすものは暴力ではなく融和であると説きます。愚かさ、欲深さも人間の本質であり、だからこそ戒めるべきであるという教養をこんなにもわかりやすく、そして子供たちにこそ伝わるようにと擬人化された寓話として、なにより遥か紀元前6世紀にこの童話集が誕生したことに深く感嘆させられます。

奇しくも紀元前6世紀といえば、お釈迦さまが開かれた仏教の起源の時代でもあります。「イソップ童話」と同様に「仏教」のお教えが2600年の時代を超えて現在に伝承されていることにあらためて感動を覚えるものですね。

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