シネマ感想文18 〜 長回し

映画における「長回し」とはカットを入れずに長い時間カメラを回し続ける映画撮影の技法のことをいいますね。この「長回し」には役者の緊張感や映像の臨場感を維持し続けることができるという効果があり、この緊張感や持続性に惹かれ「長回し」を多用する映像作家もいるようです。

この「長回し」という技法にはじめて驚かされたのは1998年公開のアメリカ映画『スネーク・アイズ』だったと記憶しています。映画の冒頭、ボクシングのヘビー級タイトルマッチの会場となるホテル内を移動し続けるニコラス・ケイジの背中をカメラが追い続け、随所でホテル内の構造や重要人物の姿を印象付けながら13分におよぶ「長回し」が続きます。この圧巻のオープニングを撮影した監督はブライアン・デ・パルマ。彼も「長回し」に惹かれた作家の一人といえそうです。

そして『スネーク・アイズ』から21年後、ついに映画の全編119分が「長回し」ワンカットの作品が制作されました。

『1917 命をかけた伝令』
(2019年、イギリス・アメリカ合作映画)

第一次世界大戦中、最前線への伝令任務を受けた2人の若きイギリス兵のある一日を全編ワンカットに見えるように密着して追いかける戦争映画。監督、サム・メンデス。

この映画の「長回し」映像には驚愕させられました。砲弾が飛び交う塹壕内の緊張感や敵軍までの距離感など今までの戦争映画にはないリアル感を感じることができます。それは時間と距離と目線を主人公と共有している感覚。映画のラスト、困難な任務を終え精魂尽き果てたように座り込む主人公の疲労感や安堵感、虚無感までも自分自身が体感しているかのようです。これらは間違いなく「長回し」という技法でしか得られない新感覚といえそうです。

かつては撮影用の35㎜フィルムのワン・リールが10分しかなかったため「長回し」にも限界があったようです。しかし現代のデジタルシネマではフィルム長の制限がないため映画全編をワンカットで撮影することもでき、さらにはワンカットで撮影しているかのように繋ぎ目を巧妙に編集することも可能なようですね。

この『1917 命をかけた伝令』も実際には複数回の「長回し」カットを繋いでワンカットに見せているのですが、観客はそれに気付くことはありません。この映画は古くからある「長回し」という技法と最新の映像技術を駆使した傑作といえそうです。

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