シネマ感想文19 〜 何が善で何が悪か?

3月1日にハリウッド俳優、ジーン・ハックマンさんの訃報が入りました。享年95歳。

1970年代から90年代にかけて数多くの作品で活躍された名優ですね。主役から敵役、往年は味のある脇役まで幅広くこなし、個性的な表情とともに存在感のある演技が際立つ素晴らしい役者でした。私たちの世代には『ポセイドン・アドベンチャー』のスコット牧師、『スーパーマン』の悪役レックス・ルーサー、『許されざる者』のリトル・ビル・ダゲット保安官、他にも『ミシシッピー・バーニング』や『クリムゾン・タイド』など名作ぞろい、しかし何をおいてもジーン・ハックマンの傑作といえば、

『フレンチ・コネクション』
(1971年、アメリカ映画)

監督:ウィリアム・フリードキン。1961年に発生したニューヨーク市警察本部薬物対策課がフランスから密輸された麻薬40Kgを押収した実在の事件がモデルのクライムサスペンスアクション映画。タイトルの「フレンチコネクション」とはトルコからフランスを経由して米国に輸出されていた麻薬の密売ルートおよびその組織のことを指す。

初めてこの映画を観賞して「日本の古くさい刑事ドラマみたいだな」と思った方は誤解です。この映画が最初なんです。「聞き込み」「張り込み」「尾行」「おとり捜査」「カーチェイス」といった刑事ドラマの王道はこの映画が原点にして頂点といっても過言ではありません。さらにいえば相棒の二人の刑事が登場する「バディムービー」の元祖ともいえる作品であり、後の日本の刑事ドラマやハードボイルド作品にも絶大な影響を与えた名作といえそうです。

この映画の主人公、ジーン・ハックマン演じる“ポパイ”ことドイル刑事という人物。はっきり申し上げてろくでもない男です。乱暴で執拗で不摂生の極み、そんな彼がクライマックスの銃撃戦で同僚の捜査官を敵と見誤って射殺するという衝撃的なシーンがあります。駆け寄った相棒のルソー刑事から「彼は死んでるよ」と声を掛けられたドイルは、同僚の亡骸にひと目くれたあと、すぐさま敵を追いかけていきます。

最初にこの映画を観賞したときのこのシーンが脳裏に焼き付いて離れません。

ー 何が善で何が悪か?

欲深さや愚かさといった人間の醜い本質も丸ごとひっくるめて、あまりにも“人間くさい”ドイル刑事を演じきったジーン・ハックマン。渾身の芝居に圧倒されました。

第44回アカデミー賞
作品賞・監督賞・主演男優賞 受賞

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